- 学校名: パラツキー大学
- 都市名:オロモウツ
- 専攻名: 医学部
- 留学期間: 2015年9月~2021年6月(予定)
- 留学形態:日本にある代表機関を通して留学
- 奨学金:なし
※奨学金は申し込んでいませんが、パラツキー大学では学生の研究活動に対し、年間で2,000コルナ(約10,000円)を支給しています。
また、大学ではチェコ以外で30日以上の実習をした場合、支給金(日本で実施した場合も支給)を受けることができ、私は臨床実習をブラジルで実施しましたが、4,800コルナ(約25,000円)を支給してもらいました。この金額は申請した学生の数により左右されます。夏に課される臨床実習は2週間のものが多いので、多くの学生はこの制度を利用していません。
高校時代は元々文系で、国際関係、国際交流に関心がありつつ、医学系を学んでみたいと考えていました。高校3年生の時に文系から理系に転向して、大学は生命科学系の学部に進学しましたが休学し、医学部を目指すことにしました。
インターナショナルコースであれば国際関係と医学の両方が学べるのではないかと思ったことと、卒業後にEUの医師免許がとれることから海外の医学部への進学を決めました。
パラツキー大学の医学部は少人数なので、学生への対応が手厚く、日本人学生が少ないことに加え、1年次の期末にすべての試験を合格しなければ退学となるというハードルがあったため、もしそこで上手くいかなければ諦めがつくとも考え、パラツキー大学を選択しました。
また、受験時に訪問したスロバキアのブラチスラバでの生活がイメージできなかった、ということも理由の一つです。
2015年の4月~7月末まで日本にある代表機関が開催している予備コースに通い、日本語と英語での生物、化学、TOEFL対策に加えて、入学試験後は大学の授業に先行して、解剖学、組織学の一部を英語で学びました。
留学に持って行って便利だったのは、文房具、食品としてはインスタントの味噌汁、おかゆ、程よい甘さのお菓子、粉末だし、また、欧州のティッシュは堅いので日本の柔らかいポケットティッシュです。
勉強関連では、大学の授業のスライドをダウンロードできるので、タブレット端末があると便利です。
その他、ヒートテックや特に女性は欧州で売っているものだとサイズが合わないため下着やズボンなどの衣服も日本から持ってくといいと思います。
化粧品や乳液などの美容品も日本から持っていくと便利ですが、シャンプー、リンスは現地でも同じものを買えます。
留学前の当時は、チェコでの医学部留学に関する情報がインターネット上でも少なかったため、日本にある代表機関の人から話を聞いたり、大学のホームページを見たり、既に進学している日本人学生との懇親会(日本にある代表機関主催)に参加したりして情報を得ました。
また、医療情報については日本の外務省や厚生労働省のホームページを参考にしました。
<英語>
英語については、高校時代に1か月短期留学をした経験があり、話すことに抵抗はなかったものの、すごくできる、という訳でもありませんでした。留学前は、日本にある代表機関が運営する予備コースでの勉強に加えて、自分でシャドーイング、英語の字幕付きで映画鑑賞、英語での読書、アメリカの子供向け文法書での学習を行い、予備コースの英語の先生にエッセイの添削も頼んでいました。
留学中は英語の勉強に時間を割くことができないので、交換留学生とのイベントや、大学の先輩が中心メンバーの聖書勉強会に参加し、英語を使う機会を増やしていました。
留学後は日本にいたときよりも英語で話せるようになりましたが、未だに口頭試問の時には、先生とのコミュニケーションに関して英語ネイティブスピーカーの同級生と比べるとハンデがあることを感じます。
<チェコ語>
チェコ語については、留学前に勉強はしませんでした。実習では、チェコ人の患者さんと話す機会があるため、大学では1年生から3年生までチェコ語の授業があり、そこでチェコ語を学びました。
授業以外ではパラツキー大学日本語学科のチェコ人学生との日本語とチェコ語の教え合いや、レストランや実習での使用を通じてチェコ語を勉強しています。
チェコ語での日常会話は難しいものの、医療関連のチェコ語であれば話せますし、レストランや買い物でも困ることはありません。
パラツキー大学には高校時代の成績証明書、履歴書、志望動機書(いずれも英文)と日本にある代表機関で受験したTOEFL PBTを代表機関から提出してもらいました。履歴書と志望動機書については、まず自分で英文で作成し、その後代表機関に添削してもらいました。
パラツキー大学の入学試験は、パラツキー大学の教授が来日し、日本で受験しました。入学試験はマークシート方式の筆記試験で英語、生物、化学に加えて物理または数学のどちらかを選択します。
その他英語での面接があり、志望動機などを聞かれます。英語力や、英語が流暢ではなくても本人のコミュニケーション能力を見られるようでした。
コメニウス大学については、現地で受験しました。入試科目は生物と化学で、正誤選択の問題集にある1000問のうち、100問が出題される形式でしたが、この問題集で試験対策を行うことが全体の入学試験勉強となりました。今では問題集の問題数が増えていると聞いています。
留学前に日本で申請を出し、約2か月で半年分の短期ビザを取得しました。その後、チェコに渡航してから長期滞在許可を取得しました。日本での滞在許可の申請は無犯罪証明書、アポスティーユ(内容証明のスタンプ)が必要であり、費用も日数も要しました。
長期滞在許可は最長1年で、1年ごとに更新する必要があります。更新手続きはパラツキー大学構内にある移民局の出張所で行う事が可能ですが、予約が必要です。ほとんどの学生が夏休み前に更新手続きをするためその時期は混み合い、予約がとれない場合は隣町に行く必要があります。
- 学費:1万ユーロ/年
- 日本にある代表機関への納付金:代表機関に確認のこと
- 生活費:家賃5万5千円程度(アパートで一人暮らし)で、全体の生活費は12万円程度ですが、寮で生活する場合は全体の生活費は7~8万円程度になると思います。
- 送金:チェコの銀行口座に生活費を半年~1年分国際送金してもらい、自分で管理しています。
<健康保険>
滞在許可を申請する際にチェコ国内の健康保険が必要なため、加入しました。この健康保険で大学病院やポリクリニック(総合診療所)にて無料で診療を受けることができます。無料での受診が可能な病院は加入している保険によって異なります。
また私は、住居、損壊も含む日本の留学保険にも加入していますが、この保険を活用した事はまだありません。
<予防接種>
予防接種については、大学入学の際にB型肝炎の接種が必須だったため、1回目を日本、2・3回目をチェコで接種しました。チェコでの接種については大学が費用を負担してくれました。
<健康診断>
健康診断については、私は日本で健康診断を受け、英語で診断書を作成してもらいましたが、費用がかかりました。健康診断書を入学前に提出していなくても、パラツキー大学の大学病院で健康診断を無料で受けることができるので、日本ではなく現地で準備する事をおすすめします。
<授業の様子>
1年~3年次までは、セメスター制(冬・夏セメスター)で、1セメスターが15週間、1~2月、6~7月が試験期間となっています。1セメスターあたりの授業科目は6~7科目です。
4年~6年次までは、ブロック制になり、1~4週間で1つの科目だけを勉強し、最後に試験があります。受講期間は科目によって異なります。午前中(午前7・8時~午後12・1時)に授業が終わることが多いですが、実習と講義を同日に行う科目もあれば、1週間すべて講義で、残りの週が実習、という科目もあります。
<試験>
すべての試験は3回まで受験が可能で、1セメスターで受けられるのは3回までですが、もし合格しなければ次のセメスターでも再度3回受験することができます。ただし、計6回受験しても不合格の科目があれば退学となります。ただし、1年次は3回受けても不合格の科目があった場合、そのまま退学となります。
<留学生>
パラツキー大学のインターナショナルコースは私の学年では3クラスあり、1クラス15人前後です。国籍でいうとイギリス人(特にアフリカ、インド、スリランカ系)とイスラエル人が多いです。日本人は1学年当たり3人程度です。ただし、学生の数や国籍、日本人の数は学年により様々です。
<留学生との交流>
他の留学生との交流に関しては、1年に1回、生徒会がパーティーを開催しています。パラツキー大学の他学部の学生とは校舎が異なるため、交流機会があまりありませんが、4年次以降にやってくるエラスムス計画を利用した交換留学生と交流しています。
エラスムス計画を利用した交換留学生向けのイベントやパラツキー大学内の日本語クラブ主催のお茶会やクリスマスパーティーに参加したことがあります。日本語クラブは他にも着物教室、和菓子イベントなどやっているので、勉強に余裕があれば参加してみたいです。
大学内には、学生によるスポーツ同好会もあり、一時期バドミントン同好会に参加していました。
<食事>
普段は自炊・外食半々で、昼食は外食、夜は自炊をすることが多いです。外食をする場合、チェコ料理屋だけではなくベトナム料理屋に行くこともあります。私は、日本食が食べたい時には自炊していますが、近くの町ブルノにラーメン屋さんがあるため、そこに食べに行く日本人学生もいます。
日本食材は、基本的に日本から持ってきています。ただ、うどん、醤油、みりん、海苔などはチェコのスーパーの外国食材コーナーで購入することもできます。さらに、大型スーパーであればてんぷら粉、糸こんにゃくが売っていることもあります。
<住居>
住居については、私はアパートで一人暮らしですが、寮に住んでいる人もいます。 現在の住居は、先輩が教えてくれた物件サイトで探し、不動産屋さんの紹介で決めました。 アパートの大家さんはチェコ語しか話せないことが多いため、交渉や相談が必要な時はチューターの先生やチェコ人学生の友人に手伝ってもらうとよいです。
大学のあるオロモウツは学園都市のため、治安は良い方だと思います。夜まで出歩いても問題ありませんが、週末の夜はクラブに行く人も多く酔っぱらいもいるので、夜は少し注意が必要です。
オロモウツ市内でのスリ、盗難などの話は聞いたことはありません。カフェでも荷物を置いたままお手洗いに行く人がいたり、他の留学生の話になりますが、携帯や財布を落としても無事に返ってきたりしていました。
レストランは英語が通じる事が比較的多いですが、滞在許可の申請、バス・トラムの定期券売り場、市役所など公共の場ではチェコ語しか通じないことも多いです。
一方、銀行には英語での対応可能な人が常に1・2名います。
<携帯電話>
携帯電話は現地の携帯電話会社の学割を利用しており、月額利用料は約2,500円で、毎月10ギガバイトの通信利用が可能です。チェコで携帯電話会社を契約していると、EU域内であれば通話・ネット共にほぼどこでもチェコと同じ条件で使用することができます。
<Wi-Fi>
アパートのWi-Fi契約は、1年で20,000円弱(1,500円/月)程度で、動画を見ることができるなど問題なく使えます。また、大学には学生向けのWi-Fi、カフェやレストランには無料Wi-Fiがあることが多く、それらを利用することが可能です。
春と秋は気候が似ており、時期が短いです。夏は日差しが強いものの、湿気が少ないため、夜は涼しく感じます。
冬が1年を通して一番長い印象です。雪は3・4日たまに降る程度ですが、気温は低くなります。以前は-15度になることもありましたが、近年は暖冬傾向で最低-5度程度です。また、冬の時は日が出ている時間が少なく、気分が暗くなりやすいです。
医療倫理について議論をする時に、宗教によって考え方の違いを感じることがあります。ただ、クラスメイト同士は宗教・文化の違いで揉めることはなく、みんな程よい距離感を保っています。一方で色々な宗教の人がいるので、食事制限の確認は大変です。
大学ではサポートシステムが整っており、医学部にはチューターの先生が2人います。チューターの先生は、日常生活のトラブル、授業のトラブル、ビザや健康上の相談など様々な面でサポートしてくれます。些細なことに関しては、チェコ人学生の友人や大学の教務課の方、チェコ語の先生に相談することもあります。
日本の病院とチェコの病院の違い、チェコの医師の印象
勤務時間に違いがあります。チェコは朝方社会で午前7~8時に診察が始まり、午後3~4時に終わるので、医師たちのアフターファイブも充実しています。また、日本と異なり、最初の2年の研修がなく、すぐに専門課程に進むことが可能なので、最低5~6年で専門医になれます。
病院の建物にも違いがあります。日本の大学病院が全ての科が一つの建物に集約し縦長であるのに対して、チェコの大学病院は横長なイメージです。科ごとに建物が異なることも多く、病院の敷地が小さな村のようです。そのため、患者さんや学生は迷子になりやすいです。また、チェコの病院は建物の見た目は古くても、医療関係の設備に関しては新しいものが多いです。
日本の医師免許を取得し、研修を2年間受ける予定ですが、いつかはヨーロッパに戻ってきたいという気持ちもあります。欧州での勤務地としてはドイツやクロアチアを検討しています。
パラツキー大学では1年次と3年次の試験が一番難関です。1年次には難しいとされる解剖学や医学物理の試験があり、ここで落第、退学になる学生もいます。一方3年次は病態生理学の試験が難しいです。
口頭試問については、インプットだけでなくアウトプットも大切なので、問題のポイントを紙に書きだし、友人と分かりやすく説明する練習を行っていました。
基本的にどこで受けても問題ありません。私の場合、2年次の看護実習先、3年次のGP(総合診療医)実習先は大学に手配してもらいました。大学に依頼した場合、GP実習はオロモウツ市内の英語が話せるGPのもとで、それ以外は大学病院かオロモウツ市内の軍病院で実習を行う事になります。大学を介した場所で実習を行う方が、書類の手続きはスムーズです。
IFMSA(国際医学生連盟)を通じた1か月の交換留学(臨床実習)も大学に申請すれば、夏に課される臨床実習として単位をもらえます。私はこの制度を利用し、ブラジルで臨床実習を実施しましたが、応募に必要となる連盟が実地する英語試験時に約1,000円の試験費用と、留学先が正式に決定した後に留学資金(渡航費、お土産代を除く)として約50,000円を支払いました。
日本にある代表機関を利用して、日本で臨床実習を受けることもできますが、その場合は日本にある代表機関の提携先の病院となり、費用が発生します。
個人のつてで実習先を探すことも可能ですが、書類でトラブルになることもあるようです。
日本での国家試験に向けて苦労したこと、アドバイスなど
まだ国家試験は受験していませんが、医療用語を英語で学んでいるので、日本語の用語が頭に入ってこないと聞いています。
また、海外で医学部を卒業した場合、日本の国家試験にたどり着くステップが長くなります。まず、書類審査の準備があり、その後厚生労働省が実施する日本語診療能力調査を受けて、ようやく国家試験を受験することができます。
チェコの大学の卒業が6月で、病院のマッチングが7・8月、日本語診療能力調査が10月にあるため、日本の国家試験対策に充てられる期間が短くなってしまいます。
留年せずに進んだ場合、7年間(6年+半年)で、日本の国家試験を受けることができます。
4年次で病院見学を開始し、レジナビ(医師向け就職サイト)を登録しました。海外の医学部で学ぶ場合は、日本に滞在できる期間が限られるため、早めの4年次から就職活動を始めた方が良いと思います。2・3年次からでも病院見学は可能ですが、私の経験上病院側も学生も就職の話に繋がりにくいと思いました。
私は、今の時点で見学した病院は1か所で、5年次の夏休みに集中的に5・6か所見学する予定です。その中からマッチングの希望病院を3か所程度に絞ります。先輩の話によると海外の医学部出身を好まない病院もあるそうです。
現地で困ったときに、周りの人に助けを求めることが大切です。私も語学の壁があり、自分で問題を抱えてしまったこともありました。今は、Google翻訳などのツールもあるので、困ったらすぐに助けを求めることが重要だと思います。