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奨学金留学
体験レポート
留学先国・地域:英国、ヨーク
学校名:ヨーク大学
専攻名:英文学および関連文学研究科
留学期間:2023年9月~2026年9月
留学形態:博士課程
奨学金名:JASSO給付型「海外留学支援制度(大学院学位取得型)」
留学の動機について
Q. 留学をしようと思った動機を教えてください。
勤めていた会社を退社し、日本の大学院の修士課程に入学した際に、最初のオリエンテーションを担当してくださった先生から留学をおすすめしていただいたのがきっかけです。私はその当時、研究者を目指す意志も専門分野も固まっていなかったのですが、「文学理論」を学際的に論じることへの関心を漠然と持っていました。このぼんやりした私の希望を聞いた先生は、イギリスの大学院がその希望を追求するうえで良い環境だと思う、とおすすめしてくださいました。日本の大学院での研究生活の中で次第に研究者を目指す気持ちが固まり、専門分野も定まってきたうえで、資料へのアクセス、私の専門分野を牽引する研究者がいること、将来の就職活動といった要素が留学の最終的な決め手となりました。
Q. 留学先の国・地域、留学先校を選んだ理由を教えてください。
イギリスを留学先に選んだ理由は、イギリス文学を中心に研究をしていたことが大きな理由です。その中でもヨーク大学を志望したのは、イギリスでは数少ない、文学に対する理論的なアプローチを専門とする現在の指導教員が在籍しているためです。
Q. 留学に対する家族の反応はどうでしたか?
当初、留学について相談をした際は、留学費用や将来の就職の面で全面的に賛成というわけではありませんでした。費用やキャリアの計画を徐々に共有することを通じて、最終的には快く送り出してくださりました。とても感謝しています。
留学の準備について
Q. 留学の準備にはどのくらいの期間を要しましたか?
留学を思い立ってから、実際に出発するまで、情報収集、学校選定、出願、ビザ申請など、それぞれの準備段階にわけて教えてください。
2021年6月 留学決意
2021年6-9月 情報収集、IELTS受験、学校選定
2021年10月 出願
2021年12月 大学院(修士課程)合格
2022年1月 大学に寮の申請
2022年7-8月 VISA手続き
2022年9月 渡英→リーズ大学入学
2022年11-12月 大学選定(博士)、指導をお願いしたい先生への連絡
2023年2月 出願
2023年4月 大学院(博士)合格
2023年5月 大学に寮の申請
2023年7-8月 VISA手続き
2023年9月 ヨーク大学入学
Q. 留学情報の収集はどのように行っていましたか?
使用したウェブサイト、雑誌、イベント、SNS(YouTube、Twitter等)などがあれば、あわせて教えてください。
・イギリス留学を経験された先輩に直接お話をお伺いする(日本で在学していた大学院の先生から紹介していただきました)
・志望大学のホームページをチェック、留学説明オンラインイベントへの参加
・先輩方の留学体験談のチェックなど
Q. 留学中の住まいはどのように探しましたか?
修士も博士も大学から紹介していただいた学生寮に住んでいます。
Q. 語学学習はどのように行っていましたか?
日本の大学院で英文を日々読んでいたことが練習になっていました。またアルバイトで英語を教えていたことも語学力の基礎固めに役立ったと感じています。
Q. 留学(あっせん)サービスなどは利用しましたか?
出願プロセスとVISA申請をサポートしていただけるbeoのサービスを利用しました。
Q. 留学にはどのくらい費用がかかりましたか。留学の資金調達はどのように行いましたか?
社会人時代の貯金、両親からお借りしたお金にくわえて、日本学生支援機構(JASSO)からいただいている給付型奨学金(大学院学位取得型)を使って留学費用を支払っています。
Q. 準備しておいてよかったこと、また準備しておいたほうがいいことなどはありますか?
大学への出願やビザの申請プロセスはともに時間がかかるので、早めに取り掛かった方が安全だと思います!
また、先輩方の体験談で紹介されているフローに目を通しておくと、それぞれのプロセスで生じる不安が緩和されると思います!
Q. 入学や学生登録の手続き、ビザの手続きなどはどのように行いましたか?
特に苦労したことや気を付けたほうがいいことなどが教えてください。
入学や学生登録の手続きは大学から届くメールの案内通りにこなせば問題がないと思います!
もしわからないことがあれば大学の問い合わせ窓口にメールをするのが良いと思いますが、なかなか返信がないことがあるので、急ぎの場合は直接大学の担当部署に出向くとスムーズだと思います!
留学中の様子について
Q. 留学中の学校生活はどうでしたか?
日本の学校との違いや、海外の学校だからこそ苦労すること、学校生活での楽しみなどを教えてください。
[修士・博士課程の流れ]
リーズ大学 修士課程(1年):2セメスター制、計4つのセミナーの単位を取得(課題論文の提出)→セメスター終了後、修士論文の執筆
ヨーク大学 博士課程(3~4年):4~5週間に一度、指導教員に博士論文のドラフトを提出→面談でフィードバックの繰り返し
修士課程で参加していたセミナーでは、日本の大学院と比較して学生の数が多く、また積極的に発言される学生が多いです。かなり前のめりにならないと発言のスキがない場合があるので、事前に共有されるリサーチタスクについての意見を多めに用意しておく+ディスカッション開始時、最初に発言を残す心づもりで準備する、と気持ちが楽になります。
修士課程で楽しかったのは、他の留学生との交流や、学生主導のイベント(カンファレンスやリーディング・グループ)への参加です。リーズ大学特有の現象かもしれませんが、他の学生との交流に力を入れている留学生が多かった印象があります。
日本の博士課程に在学していたことがないので比較はできませんが、イギリスの博士課程で私が最初に失敗したのは指導教員とのコミュニケーションです。一言でいえば、私が提出する論文に対して指導教員からいただくフィードバックを「ありがとうございます、勉強になります」という、社会人時代に身についてしまった姿勢で受け取っていたことが問題でした。途中で気がついたのは、指導教員が面談を、日本的な「上司→部下」的な指導の場ではなく、研究者同士の意見交換の場として捉えていたことです。指導教員からいただいたフィードバックに積極的に自分の意見を返して議論したほうが、指導教員の指導も「ノッてくる」し、良い関係が築けると思います。
博士課程で楽しいのは、国際学会などの場で、日本にいる頃から著作を読んでいた(スター)研究者と会ったり、話したり、自分の研究への鋭すぎるフィードバックをいただけることです。
Q. 学校外の生活はどうでしたか。寮などでの生活や休日の過ごし方、町の治安などについても教えてください。
私が現在住んでいるヨークは比較的治安が良いと思います。学校外では、大学の友だちとパブやカフェにいったり、イギリスらしいイベント(クリスマスマーケットなど)に遊びにいったり、日本語を学んでいる方との言語交換を通じて英語をブラッシュアップしたりしています。
Q. 留学中の生活で大変だったことを教えてください。また、それをどのように克服、対応しましたか?
月並みですが、英語でのコミュニケーションが思うようにいかないことには苦戦し続けています。学部生向けの授業、学会での質疑応答、大学の友人との雑談、パブで知り合った方との雑談など、さまざまな文脈でこの問題に直面します。アカデミアでの英語の使用は、もちろん未だに問題はありますが、幸いなことに回数をこなせば徐々に良くなっていきます。大学の友人や言語交換の友人との会話も徐々に関係ができてきますし、言葉の使い方のパターンが見つかって改善します。
難しいのが、大学外の方とお話するときで、ジョークに対応できなかったり、そもそも言葉自体がわからなかったりと苦戦することが多いです。現在は、言語交換でさまざまな年齢層およびご出身の方と継続して会話の練習をして、対応力を磨いています。
Q. アルバイトやインターンなどの活動はしていましたか?
留学当初はオンラインで日本の小学生を対象に英語を教えていました。
現在は、日本の大学にいらっしゃる留学生の日本語のレポートや論文を添削する仕事をしています。
留学後について
Q. 留学を経験してみて感じたこと、学んだことはありますか? 留学前と比べて成長した面はありますか。
留学を経験して感じたことは、自分の専門分野の全体像や近年の動向を見渡すことが日本よりも遥かに簡単だということです。資料へのアクセスや、学会への参加などのハードルが低いので、研究をするにはうってつけの環境です。
また、日本の大学教育を相対化する機会になるので、将来日本の大学機関で仕事をする際に(おそらく)役立つ経験を多く得られます。一番成長したと感じるのは、「国際学会や有名ジャーナルは遥か高みの研究者たちのみが参加・投稿している…」という一種の神話が解消されたことで、これらへの参画のハードルが下がったことです。
Q. 留学後の進路について教えてください。
博士課程を無事修了することができたら、日本の大学で研究者として就職したいと考えています。自分の研究活動が、日本のアカデミアだけではなく、日本社会に根付くかたちで意味をもつことを目指しています。
Q. 最後にこれから留学をする方へのメッセージ・アドバイスをお願いします。
日本の経済的な状況や国際情勢の変化等によって留学を決断するのは決して簡単ではないですが、私はその決断をして良かったと思っています。研究や語学の面で成長できる機会であるだけではなく、留学から戻ったときに日本社会とどういう関係を築くか、ということについても考えられる機会でもあります。きれいな景色や建物、親切な方もたくさんいます!ぜひ前向きにご検討してみてください。
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