定年退職後、ロングステイ先としてベトナムを選択しました。発展途上の国としての魅力、言語、対日感情、治安、物価、宗教、気候、ベトナム人の性格、食べ物などを総合的に判断しました。「ロングステイ」と「現地で何かのお役に立つ」を目的に、ベトナムでベトナム語を勉強しています。ベトナム語で紙芝居をして、子供たちを喜ばせるのが目標です!
渡航を思い立ってから現地へ出発するまでが1年8か月、具体的な大学の調査と手続きに4か月かけました。
ベトナム語は、日越友好協会のベトナム語教室に週1回通って勉強しました。
インターネット、日越友好協会の知人・友人と留学体験者から情報を聞きましたが、十分な情報を得ることはできませんでした。最終的にはハノイまで行き、実際に大学を直接訪問して情報収集しました。予約なしの訪問でしたが、対応してもらえました。
大学を訪問した際に担当者を確認して、あとはメールでやり取りをしました。全て英語です。質問の内容は、学期制か、入学時期、授業のスタイル、費用、手続きの方法、教科書、日本語での授業か英語での授業かなど、多岐に渡ります。学期制か、入学時期、授業のスタイルは大学によって全て異なります。
連絡の際に困ったことは、連絡の空白です。私は全て個人で手続きをしたので、とにかく「どうなっていますか?」としつこく問い合わせ、催促することが大切なようです。
全てオンラインで提出しました。
通常、大学のウェブサイトからアプリケーションフォームをダウンロードするのですが、私はできず、大学事務局からメールで送ってもらいました。その後、必要な情報を入力→印刷→サイン→スキャン→添付ファイルで送信。
アプリケーションフォームのほか、パスポートのコピーと写真もファイルで送りました。
出願から入学許可を受けるまで、どのくらいの期間がかかりましたか?苦労したことはありましたか?
大学から特別な入学許可書はもらっていません。大学を決めてメールでの連絡を開始してから学生ビザ取得まで約3か月でした。ベトナムへの出発予定日直前に手続きが完了しました。必要な時間は読めません。
大学の書類審査から学生ビザ取得までの流れ:
- 大学の書類審査。大学から入学許可の連絡があった後、授業料などを送金する
- ベトナムの大学がベトナム移民局に学生ビザ許可番号を申請
- 許可番号の発行
- ベトナムの大学から許可番号の連絡がある
- 許可番号記載のメール、パスポート、写真を持って、駐日ベトナム大使館・領事館で学生ビザを申請
通常一週間程度かかるが、時間的に余裕がなければ追加料金を支払い、ビザを当日発行してもらうこともできる
パスポート、写真、ベトナムの大学が送ってくれたイミグレーション許可番号、ビザ発行費用が必要でした。
最初に1年間の学生ビザをベトナムの大学に申請しても、3か月のビザしかもらえませんでした。現在は2回目の1年間の学生ビザを取得済みです。
プライベートの90分授業が1回2,500円です。事前支払いで、毎月約3万円支払っています。
90分授業を週に3回、これがCALV語学センターで<学生>になる最低条件です。
私は1対1の個人授業だったので、特別に試験はありませんでした。クラスに入る留学生は、クラス分けのために、授業開始までに簡単なテストをすると聞いています。
日本の授業と異なる点、ベトナムらしいと思う特徴、受講内容に満足しているか教えてください。
私は1対1の個人授業を受けています。先生は30代の準教授です。外国から来た個人に、準教授が個人レッスンをするのは、日本では考えられません。素晴らしい先生で、とても満足しています。
授業は英語で進めています。申請の時に日本語での授業も可能と言われましたが、私は英語での授業を選びました。
語学学習においてどんな勉強法が一番効果的だと思いますか?
生活レベル、日常会話レベルなら、発音、声調、基本的フレーズを学んで練習すれば十分でしょう。
きちんとした文章が書ける、ベトナム語で議論ができるレベルなら、文法をきちんと学び、微妙なニュアンスの違いを身につける必要があります。
現地の方、外国人留学生とどんな交流をしていますか?
一昨年(2017年)の教師の日の出会いをきっかけに、10人程のグループを結成、現在15人にまで増えています。アメリカ、ケニア、タイ、韓国、中国、台湾、ベトナムと、国際色豊かなグループです。学生に限らず、現地の友人はたくさんできました。
博士課程で研究していた日本人学生の友人が1人できましたが、既に帰国しました。現在大学で交流のある日本人はいません。
JASSO留学フェアのお手伝い、留学予定の学生の入試エッセイの指導、病院の炊き出しボランティア、日本語教師になる予定のベトナム人のお手伝い、英語指導などです。大学では、「外国人へのベトナム語教授法」の授業にモデルとして参加して、学生の練習相手になっています。先生は日本語を話す方です。
大学(USSH) のイベントで知り合った仲間たちとパーティー
学費以外の生活費/月、および内訳を教えてください。
全て含めて10万円程度で暮らしています。暮らし方で費用は相当違います。
内訳
家賃:約25,000円 学生村マンションで一部屋を利用。
食費:2~3万円
光熱費:1,500~6,000円(クーラーを使う時期は高い)
通信費:1か月に、スマホ(2GB) 350円、タブレット(3.5GB)450円
ベトナムは通信費がとても安いです。さらに色々な所でWi-Fiが使えます。
交通費
(国内):路線バス35~45円/回。大部分35円です。
(海外):日本へは大手航空会社以外に格安航空会社が2社飛んでいます。私は3~5万円を目途に入手しています。
- クレジットカード
- 国際デビットカード
- 国際キャッシュカード
現在は国際デビットカードと国際キャッシュカードで月に一回程度現金を引き出しています。ATMは街中にありますが、私はトラブルがあった場合に対応ができるように、シティバンクの支店内のATMのみ利用しています。実際に、留学生がATMでキャッシュカードを吸い込まれたケースもあります。日本の大学と連絡を取り、対処してもらったそうです。一人の留学で、組織的バックアップがない場合は、自分で解決しなくてはなりません。
1回の引き出し制限額(約4万円)につき、300円程の手数料がかかります。必要に応じて、数回繰り返します。更に為替手数料を加えたものが、必要な額です。日本からの送金の必要性を感じたことはありません。クレジットカードでのキャッシングは、利用しません。飛行機のチケット購入に限定して利用しています。ベトナムはまだまだ現金が中心の社会で、日本と似ています。
携帯するのは1~2万円程度です。緊急対応ができるように、部屋には10万円程度置いています。
クレジットカードに付帯している<90日間の医療保険>のみです。年に数回帰国しますが、ブランク期間が時々生じます。今後の検討課題です。
現地で健康管理上気をつけている点を教えてください。
薬局が発達していて、薬剤師さんがホームドクターのような役割を果たしているようです。日本では医師の処方箋がいるような薬も、タイやインドから入ってきています。薬局が本当に街のあちこちにあります。
デング熱が一番気をつけることです。日本大使館がベトナム全土に警告を出していて、実際入院したベトナム人を数人知っています。とにかく蚊に刺されないことが大事です。これが実際には難しいですが。
普段はどのように食事をしていますか?現地の食事、飲料水、食材事情を教えてください。
飲料水は全て購入しています。6Lボトルで100円です。食事は大衆食堂で1食150~250円です。場所、レストランのレベルで値段は一桁変わります。缶ビールは330mlが50円です。現在は自炊もかなりするようになっています。
日本と同じような食材は色々あります。豆腐もあります。自炊するなら、好みの調味料やルーを持参すれば調理の幅が広がります。醤油、マヨネーズなどの基本的調味料は安価であります。
大学があっせんしてくれた、規模の大きなHacinco(ハシンコ)学生村です。高層マンション2棟、中層の5階建てが数棟で、住んでいるのは大部分が学生と若い労働者です。私は21階建ての10階、12畳ほどの部屋に住んでいます。キッチン、トイレ、シャワー、クーラー完備です。ベトナム人学生は2段ベッドで6~8人のルームシェアが普通です。
住居でトラブルはありましたか?どのように対処しましたか?
停電、断水、シロアリ騒動と色々ありますが、大きな組織なので対応はしっかりしていました。日本基準でいえば満足できないことも多いですが、シロアリ騒動の時は、部屋の移動のための細かい交渉を大学のスタッフが助けてくれました。
ハシンコ学生村:テトでくつろぐスタッフ達と鍋を囲んで
現地の治安状況はいかがですか?治安状況を踏まえて、気をつけている点を教えてください。
普通に暮らしているぶんには、不安は感じません。ただし、どの家もお店も、表は頑丈な鉄柵で守られています。根本的な治安の違いは感じます。夜は地元以外、独りで出かけたり、街歩きをすることはしません。タクシーもほとんど利用しません。スリはいるそうですが、路線バスが一番安全です。
部屋の貴重品は、1.部屋の鍵、2.ロッカーキー、3.キャリーバッグキーの3重で保管しています。スマホには紐とリングをつけて、ウエストバッグとつないでいます。現金は別の財布で約1万円携帯しています。万が一の時はこれを差し出すつもりです。身ぐるみ剥がされるようなケースはどうしようもありません。
日本との気候の違いに対して心がけた点を教えてください。
ハノイには四季があります。とても長い夏と、短い秋、冬、春です。
6月下旬から7月にかけて、ラオスからの西風でフェーン現象が起こり、とんでもなく熱くなります。昼の熱気をしずめてくれる雨が全く降りません。雲1つない毎日が続きますが、日本の秋のような雲1つない快適さとは全く違います。
夏は湿度が高く、日本の熱波くらいの暑さです。1日に数回着替えることも多いです。
冬は期間は短いですが、大阪と同じくらいの寒さです。部屋の設備はエアコンではなくクーラーで、暖房はできません。ダウンジャケットやセーター、毛布がいります。
衣類は身体の大きい人は日本で十分用意しておく必要があります。178cm、84kgの私は、下着のシャツ以外ほとんど日本で調達しています。28cmの靴も日本で購入しています。
洗濯は心配いりません。重さを量って洗濯を引き受ける洗濯屋さんがあちこちにあります。私は2kg/150円で全て頼んでいます。
通信機器は日本から持参されましたか?現地での利用はいかがでしたか?
スマホとタブレット、どちらも日本で購入しました。タブレットはSIM可能な機種に買い換えました。SIMフリーが大前提です。
街の中心部には英語で対応できる電話ショップがあります。日本のような系列店方式ではなく、電気量販店のように全ての通信会社の端末、通信契約に対応しています。
現在の契約は、スマホ2GB/月で350円。タブレット3.5GB/月で450円。ベトナムの通信料金は世界でも最安値の例だそうです。
ベトナム人はほとんどノートPCとスマホの組み合わせです。私はタブレットとスマホ(どちらもアンドロイド・SIMフリー)で全てこなしています。長文入力は、キーボードをBluetoothでタブレットとつないで対応しています。PCの必要性は感じません。
私はデジタルが苦手です。ベトナムに来る半年ほど前に、初めてスマホを持ちました。そんな私からアドバイスです。
苦手な方へ:
- 最低限、SIMフリーのスマホは必要です
- 日本との連絡のためLINEを覚えてください
- 海外で利用できるメールアカウント(Gmail、Hotmail、YahooMailなど)をもってください
- スマホ、タブレット、PCの言語表示の切り替えを覚えて下さい
英語、ベトナム語への切り替えができると、色々な人にデジタルのトラブルを助けてもらえます。私はこの準備ができていなくて、スマホトラブルのために、一時帰国を考えたほどです。通信手段を失うことは、海外生活では致命的になります。
得意な方へ:
- Facebookをしてください
- ZALOを覚えてください。ベトナム版のLINEのようなものです
全ての方へ:
電話回線を使用したメッセージがベトナムではよく使われています。日本のCメール、SMSのようなものです。インターネットは不安定だったり、混んでいてなかなか相手に届かないことがありますが、電話回線のメッセージは必ず直ぐにつながります。
現地でスマホやインターネットを利用した際、手続きはどのように行いましたか?
SIMカードは道端の雑貨屋でも買えるようです。私は街中の電話店で、スマホとタブレットを6か月分くらいまとめてチャージしています。それでも5,000円にもなりません。
現地の人(学生に限らず)との文化的摩擦、トラブルの経験や、異文化の中で気をつかった点はありましたか?
気をつけるべきことは、現地の人を同じ人間としてしっかりとリスペクト(「敬意を払う」が近いでしょうか)することです。
一番困ったのは時間のルーズさです。こちらの原則もきちんと伝えて、対処しています。カフェなどではまだある程度待てますが、外での待ち合わせでは本当に困ります。私は待つ時間は30分までと決めています。連絡もなく来ない時は、30分待ったけど来ないので帰りますと、SMSとメールを入れて、その場を離れます。実際に何度かありました。
学校内・学校外で問題があった時、誰に相談しましたか?
基本的にはベトナム語の先生です。地元の英語のわかる友人に助けてもらうこともあります。
JASSOのJapan Vietnam Festival(Jan/2018) のイベントで、お手伝いのベトナム人学生達と
日本が失ってしまったような素晴らしいところがたくさんあります。
これから留学を考えている方へのアドバイスをお願いします。
渡航前、渡航後を含めてしておく方が良いこと:
海外生活の準備のための推薦図書
- 『日本人が外へ出る時』中公文庫
犬養(いぬかい)道子 著
海外生活の「心構え」から、実務的情報まで満載です。
発想は簡単です。<所変われば、品変わる!>
それを、受け入れる心を持つことが、海外生活での最も大切な心構えです。
日本の常識は、世界では通じないことが多い!の実例が、沢山書かれています。
※2019年現在新刊は入手できないので、中古品を入手するか、図書館で探してください。
- 『日本語(上/下)』岩波新書
金田一春彦 著
海外では、「言語」について考えたり、語り合ったりする機会が増えます。
現在でも容易に入手できる、日本語論の古典です。
実務篇
- お金の管理
ベトナムで現金を引き出す手段をしっかりと検討しておくこと。
- 通信手段の確保
SIMフリースマホでベトナム現地の通信会社と契約すること。私はダブルSIMの機種で日本とベトナムで使い分けています。
- ベトナム語アプリの準備とベトナム語入力練習
ベトナム語学科の学生なら最初からクリアしている問題ですが、私は英語のアルファベットでベトナム語を入力するところから始めました。理解はしてもらえますが、人の名前が確認できなくなります。
- モバイルバッテリーの準備
充電ケーブルとアダプターがあれば、充電できる所は多いです。しかし、周辺の充電可能な場所の状況が分かるまでと、移動した時などに必須です。私は3つの鞄それぞれに入れています。
- 自分のニックネームを用意
ベトナムではファーストネームで呼び合うのが普通です。呼びやすいニックネームを用意しておくと、人間関係がよりスムーズに築けます。ベトナム人が発音しにくい音がいくつかあります。例えば、tradeは「チェイド」になってしまいます。2音節以内の発音しやすいニックネームを準備するのがおすすめです。私はBAC O(バック・オー)「傘おじさん」です。
- 相手の名前を声調付きで書き留める
似た名前や、スペルが同じで声調だけが違う名前が多いです。個人の認識、確認がとても困難で、初期に知り合った人のうち数人は訳がわからなくなっています。今ではできるだけ写真も撮るようにしています。ベトナム人は写真を撮るのが大好きで、喜んで撮らせてくれます。それでさらに一歩近づくことにもなります。
留学中の時間割
時間 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
9:00 ~ 10:30 |
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ベトナム語 |
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ベトナム語 |
15:00~16:30 |
ベトナム語 |
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